 |
|
男性不妊の基礎知識 1:男性生殖器の構造と問題の起きやすい部位 |
|
 |
1.構造
|
|
 |
|
2.問題のおきやすい部位
|
 |
 |
膀胱
|
: |
精液が尿道に送られずに膀胱に逆行する(逆行性射精)
|
|
精管
|
: |
精子の通過が障害される(閉塞性無精子症) |
|
|
|
生まれつき、精管が備わってない場合など(先天性精管欠損)
|
|
前立腺・精のう腺
|
: |
炎症を起こし、精子の運動率を低下させる(精子無力症、膿精液症) |
|
|
|
精液が造られない(無精液症)
|
|
陰茎・亀頭
|
: |
勃起できない(勃起不全) |
|
|
|
射精できない(射精障害)
|
|
精巣
|
: |
精子が形成されない(非閉塞性無精子症) |
|
|
|
精子が少ししか造られない(乏精子症)
|
|
精索静脈
|
: |
静脈の弁(血液逆流を防ぐ)の働きが悪くなり、精巣内温度を上昇させ、精子形成に悪影響を与える(精索静脈瘤) |
|
|
▲ページTOPへ
|
 |
|
男性不妊の基礎知識 2:精子を造る環境 |
|
|
1.精巣
|
|
 |
ヒトの精巣は18〜20mlの容積があります。精巣は、白膜とよばれる膜で包まれており、その中身は200〜300くらいの小葉とよばれる部分にわかれています。一つの小葉には精細管(直径150〜300μm、全長30〜70cm)が3〜4本あります。精細管のなかには、精子や精子の基になる細胞群(精粗細胞、精子細胞など)、テストステロン(精子を造るための重要な働きをする男性ホルモン)を産生するライディッヒ細胞や、精子を造る環境を調整しているセルトリ細胞など、様々な細胞が混在しています。 |
|
|
 |
|
2.精子を造る内分泌系
|
|
 |
精子形成は、間脳の視床下部−下垂体−精巣という3つの部位で巧みにコントロールされています。たとえば、『精子を造りなさい』という命令がでると、間脳の視床下部から分泌されたGnRH(性腺刺激放出ホルモン)は、脳下垂体に働きかけ、性腺刺激ホルモンであるFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)の分泌を促します。男性の場合、性腺を分泌する器官は精巣であり、FSHは精巣内のセルトリ細胞に、LHはライディッヒ細胞に働きかけて、それぞれ、精巣での精子形成を促します。ですから、これらの一連の流れに一箇所でも問題があると、精子がうまく造れなくなってしまいます。 |
|
|
 |
|
3.精子ができるまでのプロセス
|
|
 |
精子ができるまでの過程は、 |
|
(1)
|
粗細胞が体細胞分裂によって増殖し、第一次精母細胞に分化する過程 |
(2)
|
第一次精母細胞が減数分裂を経て、精子細胞へと分化してゆく過程 |
(3)
|
精子細胞が分化して鞭毛をもった精子へと変態してゆく過程 |
|
|
以上の3段階にわけられます。
|
|
(1)、(2)の精子細胞ができるまでの過程を精子形成(spermatogenesis)といい、(3)の過程を精子完成もしくは精子発生(spermiogenesis)といいます。精粗細胞から精子になるまでは、(1)の過程に26日、(2)の過程に32日、(3)の過程に16日かかり、合計で74日かかるといわれています。ですから、乏精子症などで薬物療法を受けた場合、効果が現れるのは、2ヶ月半ほどかかることになります。また、無精子症のなかには、この一連の過程が途中で止まってしまうケースもあり、現在、最も治療が困難な症例の一つとなっています。 |
|
|
 |
|
4.精子の構造
|
|
 |
ヒトの精子の全長は約50μmです。
精子は、大きくわけると頭部、中片部、尾部の3つの部位からなっています。
|
|
頭部
|
: |
ほとんどは、遺伝情報などが入っている核からなり、先端部分には、受精時に必要な先体があります。
|
中片部
|
: |
ミトコンドリアからなり、運動エネルギーの供給源となっています。
|
尾部
|
: |
鞭毛からなり、鞭毛の収縮、伸張によって精子は運動します。形態が異常な精子が多く見られる奇形精子症では、しばしば受精障害が見られます。また、形態的に正常であっても、尾部の構造異常などで精子が運動できない場合もあり、やはり、受精障害が起こります。 |
|
|
|
<精子の全体像>
 |
|
<精子尾部の断面図>
 |
|
 |
尾部は、9本のcourse fiber、9個のdoublet microtubuleと2個のcentral microtubuleを持ち(9+9+2構造)、鞭毛の運動に大きく関与している |
|
|
▲ページTOPへ
|
 |
|
男性不妊の基礎知識 3:男性不妊症の原因について |
|
|
1.造精機能障害
|
|
 |
精子を造る機能自体に問題があります。精巣や内分泌系(ホルモン分泌等)の異常がひき起こします。男性不妊の原因として最も多く見られ、全体の90%程度を占めます。非閉塞性無精子症や乏精子症と診断されます。
|
|
(1)
|
特発性
|
|
原因がはっきりせず、精子形成に異常をきたすものを言います。しかし、造精機能障害の60%が原因不明であり、治療を非常に困難なものとしています。薬物療法や、人工授精、体外受精、顕微授精などが適応となります。精子だけでなく、精子の元になる細胞(精原細胞)も存在しない場合は、現在のところ治療法はありません。
|
(2)
|
精索静脈瘤
|
|
造精機能障害の15〜30%を占めます。これは、精巣内の精索静脈というところの血管弁の働きが悪くなり、血管にコブのようなものが出来ることを言います。このコブがあると、血流悪化し、精巣内温度が上昇してしまい、精子を造る機能が低下してしまいます。外科的手術をすれば、良くなることも多く、自然妊娠が期待できる場合もあります。
|
(3)
|
内分泌障害(ホルモン分泌の異常)
|
|
男性の性ホルモンの分泌は、視床下部−下垂体−精巣系で巧みにコントロールされています。この一連の流れに問題があると、精子がうまく造れなくなります。また、下垂体の腫瘍(プロラクチノーマ)により、起こることもあります。治療は薬物療法が中心となり、程度によって人工授精等を行っていくことになります。また、クッシング症候群(副腎皮質ホルモン分泌異常)、甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの低下)などの全身性内分泌障害でも起きます。
|
(4)
|
停留精巣
|
|
精巣は、出生時になるとお腹の中から陰嚢に自然に下がってきます。しかし、精巣が下りてこないと、停留精巣になります。停留精巣では、精子を造る機能が弱い場合が多いといわれています。
|
(5)
|
性染色体異常
|
|
クラインフェルター症候群(47, XXY)
|
約500人に1人の割合で存在し、正常男性の性染色体核型XYに対し、過剰のXを持ちます。多くは不妊症で、精巣萎縮、女性化乳房などを伴う場合があります。
|
46, XX male
|
: |
表現型は男性を示すものの、核型は女性であり、精子形成が認められた症例は今のところ見当たりません。
|
47, XYY
|
: |
過剰のYを持ちますが、まれに精子形成が認められる場合があります。
|
|
(6)
|
常染色体異常
|
|
相互転座
|
: |
2箇所以上で切断された染色体が他の染色体に結合転座したものを言います。
|
ロバートソン転座
|
: |
端着糸型の染色体、13、14、15、21、22番の間で、短腕を失い、長腕同士が融合したもので、染色体数は45本です。
|
逆位
|
: |
同一染色体内で2箇所に切断が起こり、中間部分が逆転して再結合したものを言います。
|
|
(7)
|
物理化学的因子
|
|
悪性腫瘍などの治療に伴う放射線療法(放射線被曝)や、化学療法(抗癌剤)などは、精子形成に悪影響を及ぼし、最悪の場合、精子が形成されなくなってしまう場合があります。ですから、放射線療法や、化学療法を受ける前に、精子を凍結保存することが急務です。また、日常の生活においても、高温環境、喫煙、あるいは鉛、カドミウムなどの重金属が精子形成に悪影響を及ぼします。
|
(8)
|
免疫性因子
|
|
体自身が過って、精液中の成分や、精子を異物と認識して抗体(抗精子抗体)をつくってしまい、自らの精子などを攻撃してしまうことがあります。
|
(9)
|
ムンプス精巣炎(耳下腺炎性精巣炎)
|
|
思春期以降のムンプス耳下腺炎(おたふく風邪)は、30%くらいの頻度で、精巣に炎症が起こし、精子を造る機能が低下してしまう場合があります。両方の精巣で炎症が起こる確率は、10〜30%で、そのうちの10%で、著しい精巣の機能低下が起こるといわれています。
|
|
|
|
2.精路通過障害
|
|
 |
精巣内できちんと精子が造られているにも関わらず、精子の通り道(精巣−精巣上体)がなんらかの原因でつまってしまい、精子が外に排出されないケースがこれに当たります。治療としては、精子の通り道を作りなおす精路再建術という手術を行います。うまくいけば自然妊娠も可能ですが、精路が再建できない場合には、精巣や精巣上体から精子を直接回収して顕微授精を行い、妊娠成立を試みます。
|
|
(1)
|
先天性
|
|
生まれつき精管が無い場合や、精巣上体の発育が悪く通り道が詰まっている場合などがあります。
|
(2)
|
病原菌(結核菌、クラミジアなど)
|
|
結核菌などにより、精巣上体や精管が炎症を起こし、その後遺症として、精管や 精巣上体が詰まってしまう場合があります。
|
(3)
|
鼡径ヘルニア(脱腸手術)
|
|
子供のころの鼡径部、陰嚢部の手術は、精巣の血管や、精管を損傷する場合があります。特に、幼児期の鼡径ヘルニアの手術での精管が切断されているケースは高頻度で見られます。
|
(4)
|
その他
|
|
精のう腺部狭窄(狭くなっている)、陰嚢内の手術・外傷などによっても、精路通過障害が起きることがあります。
|
|
|
|
3.副性器炎症について
|
|
 |
副性器の機能障害は、前立腺の炎症や、精のうの炎症が原因となります。副性器の炎症は、以前は結核菌やマイコプラズマなどによるものがほとんどでしたが、最近では、クラミジアなどの性行為感染症(STD)によるものが大半を占めています。副性器に炎症が起きると、白血球や雑菌が射精した精液中に混じり(膿精液症)、精子を攻撃して殺してしまうことがあります。そのため、死んでいる精子の割合が高くなり、無力精子症になってしまうことがあります。
治療は、炎症をおさえる薬物療法(抗菌剤)が中心になりますが、改善効果がなければ、生きている精子を回収して、顕微授精などの不妊治療をすすめていきます。
|
|
|
4.性機能障害
|
|
 |
性欲が低下している、勃起しない、射精しないなど、性交渉に支障をきたす場合は性機能障害と呼ばれています。男性不妊外来を受診するカップルの一割程度に性機能障害がみられます。代表的なものに、勃起障害(ED)や、射精障害(逆行性射精、膣内射精不能)などがあります。 |
|
 |
▲ページTOPへ
|
|
|