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男性不妊の治療 1:精液所見からみた男性不妊症とその治療法 |
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1.乏精子症(oligozoospermia)
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乏精子症(精子濃度2000万/ml以下の場合を指す)とは、精子が精液中に存在しているもののその濃度が低い症例についていいます。
主に、薬物療法で精子濃度の増加を試みますが、精索静脈瘤などが原因となる場合は、外科的療法を実施することもあります。ただし、高度の乏精子症では、自然妊娠の可能性は低く、通常の人工授精、体外受精法でも、受精成立が困難なので、精子をガラスピペットで直接卵の中に注入する顕微授精法(ICSI)を用います。
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2.無力精子症(asthenozoospermia)
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前進する精子が50%未満、または、高速に運動する精子が25%未満の場合についていいます。副性器などの炎症が合併している場合は、薬物療法が中心になりますが、そうでない場合は、人工授精あるいは顕微授精の対象となります。
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3.無精子症(azoospermia)
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精子が精液中に全く見られない症例についていいます。
この無精子症も、精子の通り道がただ詰まっているだけの閉塞性のものと、精子形成自体に問題がある非閉塞性のものがあります。
閉塞性無精子症
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精路再建術後(手術で精子の通り道をつくりなおす方法)自然妊娠が期待できることもあり、また、そうでなくとも、精巣や精巣上体から直接精子を回収することは可能です。ただ、精巣や精巣上体から回収した精子は十分な運動能力を獲得しておらず、自力で卵と受精することが困難なので顕微授精法が必要となります。ここ近年の顕微授精法の普及で、閉塞性無精子症患者の妊娠率については、飛躍的に改善されています。
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非閉塞性無精子症
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精子形成自体に問題があり、精液中に精子が出てくる程、精子形成は活発に行われていません。ですから、非閉塞性無精子症の場合、精巣中に精子が発見できない場合も多く、現在、男性不妊の中で最も困難な症例の一つといえます。 |
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4.死滅精子症(necrozoospermia)
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精液中に精子は存在しているものの、全く運動精子を認めない症例についていいます。
この症例は顕微授精法を行っても、受精率は10%程度と非常に低いのですが、受精すれば、妊娠の可能性は期待でき、過去の報告では無事出産に至っている例もあります(Barros et al.,1997)。
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5.奇形精子症(teratozoospermia)
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70%以上の精子が形態異常を伴うものについていいます。奇形精子は受精する能力が低いのですが、できる限り形態のよい運動精子を選んで顕微授精することで、受精させることは可能です。しかし、奇形精子症のなかには、すべての精子が円形の巨大頭部を有する症例(globozoospermia)や、運動能力をつかさどる精子尾部の構造異常を呈する症例(immotile cilia syndrome)などがあり、これらの場合、受精させるために特殊な処置(卵子の活性化処理)を必要とすることがあります。 |
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<精子頭部の構造異常>
巨大円形精子症(globozoospermia)
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巨大な円形頭部が特徴で、
卵子活性可能が低いと
言われている |
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<精子尾部の構造異常>
9+9+0 構造精子
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inner dynein arm 欠損精子
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男性不妊の治療 2:薬物療法における精液所見改善 |
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薬物療法の効果は、個人差が大きいですが、軽度の乏精子症などには効果がある場合もあります。薬物療法には、内分泌系に作用するホルモン療法と、非ホルモン療法にわけられます。
以下に代表的な薬品を示します。 |
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≪薬物療法に用いられる薬剤およびその効果≫
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非内分泌療法
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ビタミンB12(メチコバール)
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DNA合成を促進し、精子形成を促進する
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ビタミンE(ユベラN)
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精子の運動性を維持する
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カルニアチン
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精子の運動性が向上する
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ATP製剤
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精子形成、運動性が向上する
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漢方療法(補中益気湯など)
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精子形成が向上する
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内分泌療法
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抗エストロゲン剤(クロミッド)
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精子形成を促進する作用は強力だが、ごくまれに肝機能障害が起きることがある
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hMG、hCG、rFSHなど
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低ゴナドトロピン性性腺機能低下症に対して用いられる
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高プロラクチン血症治療剤
(テルロンなど)
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乏精子症の原因が高プロラクチンと考えられる場合に用いられることがある
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男性不妊の治療 3:外科的療法 |
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精索静脈瘤
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精索静脈瘤は、乏精子症、無力精子症などの原因の一つと考えられており、手術療法が有効です。高度の乏精子症では、精索静脈瘤手術をしただけでは、根本的な治療にはなりませんが、病態の悪化を防ぐという意味で有効であるといえます。手術は、静脈瘤のできている静脈血管だけを塞ぐことによって、他の血管の血流がよくなることを期待して行います。術式には、低位結紮術、高位結紮術などがあります。
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精路再建術
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精路(精子の通り道)がなんらかの原因で詰まっている場合、精管どうしをつなぎ合わせたり、精管と精巣上体管をつなぎあわせることによって、精路を再建する方法をいいます。一般に、顕微鏡下での手術となります。パイプカットなどにより、切断された精管どうしをつなぐ場合、手術成績はかなり良好であるといわれています。 |
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男性不妊の治療 4:特殊な精子回収法について |
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精巣上体精子採取術(MESA)
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痲酔下において、精巣上体から直接精子を採取する方法です。
閉塞性無精子症で精路再建術が困難な場合などに用いられます。採取した精子は顕微授精に用いられます。
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精巣内精子採取術(TESE)
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無精子症において精巣上体精子が回収できない場合や、他の治療が無効な射精不全の場合に、直接精巣から精子を採取する方法です。
現在最も有効な手術方法は、顕微鏡下精巣精子採取術(マイクロダイセクション法)と言われています。採取した精子は精巣上体精子と同様に顕微授精に用いられます。
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<従来法>
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<マイクロダイセクション法>
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白膜下に3〜6ヶ所切開を入れ、少量の精巣組織を取り出す |
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血腫形成、精巣萎縮、血中テストステロン値の低下などの術後合併症を伴うことがある |
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顕微鏡下で行い、精子が存在しそうな拡張した精細管のみ回収する |
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術後合併症を伴いにくい |
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電気射精法
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逆行性射精などの射精障害に用いられます。患者の直腸内に電極をいれ、前立腺部を電気的に刺激して、射精を促す方法です。通常、麻酔下で行います。
回収された精子は状態が良ければ、人工授精にも使用できます。
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前立腺マッサージ法
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この方法も、逆行性射精の場合に用いられ、直腸検診と同じ要領で前立腺を刺激する方法です。脊椎損傷の方に有効な場合があります。この方法は電気射精法にくらべて簡便であるのが利点です。 |
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男性不妊の治療 5:性機能障害の治療 |
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●勃起障害(ED)
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性交時に勃起しないEDには、心理的要因と、身体的要因があります。
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1.心理的要因
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心理的な要因の一つにストレスが挙げられます。
初体験の時期が遅かった人や、性に対して奥手な人にとっては、性行為自体が極度のストレスとなり、勃起が障害されます。また、心理的な要因には、深層心理にまでおよび、精神科の専門治療が必要な場合もあります。治療としては、専門医のカウンセリングにより自分の性生活を見直しながら、性交渉の自信をつけていく方法が取られます。うまくいった経験が積み重なっていけば、おのずと改善されていきます。
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2.身体的要因
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身体的なものとしては、陰茎の勃起に必要な血管や神経、ホルモンに異常がある場合があります。特に、動脈硬化などで、陰茎への血流が悪くなっていると、充分に勃起できません。よって、薬物療法が中心になります。近年、バイアグラの登場により、治療成績は大幅に改善しました。しかし、ごくまれに副作用が出る場合があるので、服用には、専門医の診察が必要です。
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●射精障害
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勃起には問題がなくても、射精ができない状態を射精障害と呼んでいます。
射精障害の内訳は、膣内射精不能、早漏・遅漏、逆行性射精などが大部分を占めています。
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1.膣内射精不能
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膣内射精不能においては、マスターベーションで射精ができても、膣内では、射精できないケースが半分以上を占めます。原因としては、過ったマスターベーションや性交に集中できないことが挙げられます。過ったマスターベーションとは、布団や手のひらに強くこすりつけることなどを指します。こういったマスターベ−ションを頻回に行っていると、マスターベーションの刺激が強すぎて、膣の刺激では射精が起きにくくなります。治療としては、正しいマスターベーションを訓練して、膣の刺激でも射精するように指導します。性交に集中できない場合は、性的なイメージを空想して集中力を高めます。
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2.早漏・遅漏
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主に、心理的な要因によるもので、EDと同様の治療となります。
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3.逆行性射精
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逆行性射精は糖尿病や、前立腺の術後、尿道や膀胱の術後に発症するケースが多く、また、脊椎損傷などによっても起こります。治療としては、膀胱から精子を採取したり、前立腺に刺激を与えたりして精子を採取し、人工授精、顕微授精等を行います。 |
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