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妊娠率の落とし穴
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不妊治療において、「妊娠率」は方針を決定する上で非常に大きな意味を持ちます。
実際に不妊治療お受けになるにあたっては、まずメディアやインターネットで口コミ情報を検索し、次に各病院が公表している妊娠率や費用を比較検討される方も多いのではないでしょうか。

「根拠に基づいた医療Evidence Based Medicine:EBM(※1)」という概念が提唱されて以来、日本でもEBMに沿った考え方がかなり浸透してきた感があります。
(※1)EBM:Evidence Based Medicine 根拠に基づいた医療
個々の患者のケアについての意志決定の場で、良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学的知見を用いる("conscientious, explicit, and judicious use of current best evidence") 医療。
不妊治療の分野も例外ではなく、治療方針を決定するにあたって、「この治療法を選択したら目的とする結果(妊娠)がどのくらいの確率(妊娠率)で得られるか?」という疑問に対して、ある程度根拠を明らかにし具体的な数字をお示しする必要性があります。
そこで、患者、医師、メディアのいずれにとってもわかりやすく共有しやすい指標として「妊娠率」がよく使われるのですが、実はこの「妊娠率」には大きな落とし穴が存在します。
そこで、このページをご覧になった方に少しでも「妊娠率」についての理解を深めていただき、治療方針を決定するにあたって納得のいく選択が出来るよう「妊娠率の真実」に迫ります。
わかりやすくするため、本筋から離れると思われる例外事項はできるだけ省略し、随所にあえて断定的な表現を心がけておりますことを、あらかじめご了承下さい。
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妊娠率を左右する要因 |
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1.妊娠の定義
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「妊娠」にはいくつかの段階があり、その意味合いが異なります
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1)
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妊娠の第一段階:hCG検出(着床)
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生物学的には「受精卵(精子と卵子が受精したもの)が子宮内膜に接着し胎盤を形成する現象(=着床)」をもって「妊娠」とみなします。 ただ、受精卵はとても小さくしかも子宮の中で起こっている着床は直接目で見て確認することはできません。そこで、着床しているかどうかの目安として、血中あるいは尿中のヒト絨毛ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG)というホルモン値を測定します。
このホルモンは、妊娠していない時にはほとんど検出されないので、体内からある一定以上の量が検出されれば「妊娠している(着床している)」と判断できます。ただ、少量のhCGを検出しても子宮内に胎嚢(※2)が見える前に通常の月経と同じように出血し流産に至ることもあれば(化学的流産)、子宮内に胎嚢も見えず出血も起こらず流産していることもあります。
(※2)胎嚢:経膣超音波検査で子宮内にみえる環状の構造物。胎児の発育する空間。 |
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「hCGが検出された段階」ですべて「妊娠」と判定すると・・・
「妊娠数」に多くの初期流産が含まれてしまい「妊娠率」が高くなる傾向にあります。
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2)
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妊娠の第二段階:胎嚢確認
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着床は、必ずしも子宮内で起こるとは限りません。
正常の子宮内膜以外の部位に受精卵が接着した場合の妊娠を子宮外妊娠といい、正常妊娠とは区別します。子宮外妊娠の場合、生きて元気なお子さんを得ることはきわめて困難です。 これは、体外受精で受精卵を確実に子宮内にお戻ししたとしてもある一定の頻度で発生します。そこで、子宮内に正常に着床しているかどうかは胎嚢の有無で判断します。
子宮内に胎嚢が確認できれば「子宮内に正常妊娠している(正常に着床している)」と判断できます。
ただ、胎嚢は確認できてもその後うまく育たず子宮内で流産してしまう場合もあるので(稽留流産)、慎重な経過観察が必要です。 |
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当院では、この「子宮内に胎嚢が確認された段階」を「妊娠」として「妊娠率」を算出しております。
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3)
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妊娠の第三段階:胎芽心拍確認
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胎嚢が子宮内に確認できても、必ずしも胎嚢内に胎芽(※3)が育つとは限りません。
正常に胎芽が発育しているかどうかは「経膣超音波検査で子宮内に拍動する胎芽心拍が確認できるかどうか」で判断します。胎嚢内に胎芽心拍が確認できれば、順調に発育する可能性が高くなってきた」と判断できます。
(※3)胎芽(妊娠10週未満の胎児)と胎児(妊娠10週以降の児):胎芽期には器官形成も不十分で、ヒトの胎児としての特徴が十分に備わっていないので、胎児と区別して特に胎芽と呼びます。 |
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2.妊娠率の定義(算出方法)
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どの段階の「妊娠」かによって「妊娠率」は大きく異なります。
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具体的な例で考えてみましょう。
(例)10人の患者様がある治療を試みました。 |
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(1)このうち6人に妊娠反応が陽性にでた(hCGが検出された)とすると・・・
妊娠率(1)
=6/10×100(%)
=60(%) |
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(2)さらにこの6人のうち4人に胎嚢が確認できたとすると・・・
妊娠率(2)
=4/10×100(%)
=40(%) |
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(3)さらにこの4人のうち3人に胎芽心拍が確認できたとすると・・・
妊娠率(3)
=3/10×100(%)
=30(%) |
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このように「10人の患者様がある治療を試みて3人に胎芽心拍が確認できた」という事実には変わりないのに、どの段階を「妊娠」と考えるかによって「妊娠率」は(1)〜(3)のように大きく異なります。 |
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越田クリニックの妊娠率算出方法
※当院では「妊娠率」を以下の通り算出しております。
「妊娠」 :妊娠反応が陽性で子宮内に胎嚢が確認できた状態
「妊娠数」:「妊娠」された患者様数(単位:人)
「妊娠率」:(単位:%)
タイミング法 =「妊娠数」/挙児希望の新規患者様数 ×100
人工授精 =「妊娠数」/人工授精を施行した周期数 ×100
体外受精 =「妊娠数」/胚移植を施行した周期数 ×100
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3.病院の治療方針:ART(※4)の適応基準
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病院の治療方針によって「妊娠率」は大きく異なります。
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「妊娠」および「妊娠率」の定義をそろえただけでは、各病院が公表する「妊娠率」を比較して病院の優劣をつけるのは困難です。 妊娠率を左右するもう一つの大きな要因である「病院の治療方針:※ARTの適応基準」を考慮していないからです。

日本産婦人科学会の会告(「体外受精・胚移植」に関する見解)には、体外受精・胚移植の適応として「これ以外の医療行為によって妊娠成立の見込みがないと判断されるもの」と明記されていますが、肝心の「これ以外の医療行為によって妊娠成立の見込みがないかどうか」の判断基準が明記されていません。
そこで、明らかに自然妊娠の可能性がないと判断できる場合はどの病院でも体外受精・胚移植を行うでしょう。
この場合の適応基準は比較的明確であり、これによって得られた「妊娠率」は比較する意味があるのかもしれません。
一方、自然妊娠の可能性が少ない場合や、明らかな不妊原因がわからない場合は、「体外受精・胚移植以外の医療行為によって妊娠成立の見込みがないかどうか」の判断は各病院に一任されています。
したがって、患者様の年齢や希望を加味した上で、タイミング療法(自然妊娠)を継続する病院もあれば、すぐに体外受精・胚移植を行う病院もあり、病院の考え方や判断によって治療方針が異なるのが現状です。
このように不明瞭な判断基準によって適応された「ある治療(たとえば体外受精)」の「妊娠率」が病院間で大きく異なるのは当然の結果と言えるでしょう。
(※4)ART:assisted reproductive technology 生殖補助医療(高度生殖医療)
「不妊症の診断・治療において実施される人工授精、体外受精・胚移植、顕微受精、胚凍結、卵管鏡下卵管形成などの専門的であり、かつ特殊な医療技術の総称」 |
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産婦人科用語集(日本産婦人科学会編) |
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妊娠率と「病院の実力」 |
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病院が公表する「妊娠率」は「病院の実力」をそのまま反映しているのでしょうか?
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A病院
患者背景(※5)に拘わらず、ほぼ全例に体外受精・胚移植を行う。
(※5)患者背景:年齢・不妊原因・不妊治療歴など |
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B病院
患者背景を考慮した上で、個々にタイミング法、人工授精、体外受精・胚移植を適応する。
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| ↓ |
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↓ |
10人の患者様がA病院を受診し、10人とも体外受精・胚移植を試みそのうち6人が妊娠したとします。
体外受精・胚移植の妊娠率(1)
=6/10×100(%)
=60(%) |
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10人の患者様がB病院を受診し、3人がタイミング法や人工授精で自然妊娠し、残りの7人が体外受精・胚移植を試みそのうち3人が妊娠したとします。
体外受精・胚移植の妊娠率(2)
=3/7×100(%)
=43(%) |
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このように「10人の患者様が不妊治療専門病院を受診して6人が妊娠した」という事実には変わりないのに、「病院の治療方針:ARTの適応基準」が異なることによって体外受精・胚移植の「妊娠率」は(1)(2)のように大きく異なります。
しかも、A病院を受診し体外受精で妊娠した6人中3人は、B病院では自然妊娠できたかもしれません。
仮に、この治療方針の異なる2つの不妊治療専門病院(A・B)が「病院の実力」といった表現で下記の通りメディアに紹介されたとします:
A病院:体外受精・胚移植の妊娠率 60%
B病院:体外受精・胚移植の妊娠率 43%
さて、皆様はどちらの病院をお選びになりますか? |
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妊娠率と「個別化した治療」 |
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「妊娠率」は、あくまで治療方針を決める上で必要な情報の1つです。
ご希望を丁寧にお伺いした上で「個別化した治療」をご提案します。
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一般的に、体外受精はタイミング法や人工授精に比べ、妊娠する可能性が高い反面、肉体的・精神的・経済的な負担は大きい、と言われています。
事実、妊娠を希望して不妊治療専門病院を訪れる患者様の多くは「最小限の治療で最短で安全に妊娠する」ことを望まれるのも事実です。
そこで、来院されるすべての患者様に「妊娠率」が高いことを理由に体外受精をおすすめするのは問題ですが、一方で、自然妊娠の可能性が極めて少ない患者様にいつまでもタイミング法や人工授精をおすすめするのも問題があります。 |
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そこで私どもは、「妊娠率」だけにとらわれない「個別化した治療」をご提案します。
越田クリニックでは
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- ●治療方針を決定する上で重要と思われる必要十分な検査をおすすめします。
●良心的に、明確に、分別を持って、最新最良の医学的知見をご紹介します。
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ここで、手法の優れた研究で得られた最新最良の医学的知見から、現時点で体外受精が推奨されると判明した場合に、次の過程がとても重要な意味を持ちます。 |
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推奨されるその治療自体がその患者様を幸せにするかどうか。
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たとえ体外受精が推奨されるとしても、患者様自身がその治療を希望されない場合は、ご意向をお伺いした上で「結果的に妊娠するかどうか」だけではなく「最終的に満足できるかどうか」に配慮した選択肢をお示しする必要があります。私どもは、個々の患者様の特性を見極め、患者様の価値観を適切に把握し、あくまで、その患者様に最も適した「個別化した治療」をご提案することを心がけており、患者さまに納得のいく最良の選択をしていただくために「説明と同意・選択」を徹底しています。 |
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