胚培養士掲示板
卵子や精子に関する質問、培養室についてのご質問に当院胚培養士がお答え致します。
アイ(女性:大阪府)様から
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顕微授精で受精率が低かった場合、受精障害に対してカルシウムイオノファーは有効ですか?
前回の体外受精で顕微授精を行いましたが、受精率が悪く、ほとんど受精卵が
得られませんでした。
受精障害に対してカルシウムイオノファーは効果がありますか? -
胚培養士より
体外受精において顕微授精(ICSI)は、一般的に高い受精率が得られる受精方法です。しかし、ICSIであっても、まったく受精しない完全受精障害が1〜3%程度の頻度で発生すると言われています。受精障害の原因は、卵子側・精子側などさまざまですが、その中でも精子側の要因の一つに「卵子活性化障害」があります。通常、精子は卵子の透明帯と呼ばれる、胚の周囲を包む糖の膜(外殻)を通過した後、卵子を活性化する因子を放出します。しかし、この因子がうまく放出されない、あるいは欠如している場合、卵子が活性化されず、受精が起こらないことがあります。卵子活性化障害による受精障害かどうかを直接調べる方法はありませんが、そのような精子による卵子活性化障害に対しては、人為的卵子活性化(カルシウムイオノファー)という方法によって、顕微授精における受精率の改善を期待することができます。これは、顕微授精を行った卵子をカルシウムイオノファーという薬剤で処理し、細胞外のカルシウムイオンを細胞内へ拡散させることで、卵子の活性化を促す方法です。カルシウムイオノファーは、卵子活性化障害がある場合に、卵子の活性化を助け、受精や胚発生を促進する有効な手段と考えられています。一方で、出生児への影響はないとされていますが、一部の卵子にダメージを与える可能性があることも指摘されています。また、カルシウムイオノファーの使用により、格段に受精率が向上したとする明確な臨床報告は多くありません。すべての方に効果があるわけではないため、適応を慎重に見極めることが重要です。本手技は保険適用となっており、当院でも実施しています。導入が望ましいと判断される症例については、医師および胚培養士からご提案させていただいています。