医療法人 越田クリニック

胚培養士掲示板

卵子や精子に関する質問、培養室についてのご質問に当院胚培養士がお答え致します。

H(女性:宮城県)様から

2008.03.24

  • 頭部円形奇形精子での顕微受精

    去年行い、卵子の活性化と言う処置を行い、無事妊娠にいたりました。
    今臨月です。しかし、このような処置を行っているので、普通に妊娠してる方より染色体異常が起こる可能性が高いとのことで、出産をする病院に不妊治療を行ってた病院から出産時の臍帯血での染色体異常検査を勧めるようにとお手紙がきました。出産をする病院の先生はご主人とよく相談して決めてくださいというのですが・・・出産まじかになって・・・すごく不安です。精子の奇形率が100%なので子供に遺伝するのか不安でふあんで・・・。卵子の活性化の処置というのもどのような処置を行っているのでしょうか・・・。

  • 胚培養士より

    お答えします。卵子の“人為的”活性化法については、代表的なものは2つ挙げられます。①カルシウムイオノフォアという薬剤を用いて、卵子細胞内にカルシウムイオンを強引に取り込ませ、卵子の活性化を誘起するもの、②電気的な刺激を用いて、卵子の細胞膜に一時的に小さな孔をたくさんつくり、カルシウムイオンを卵子内に強引に取り込ませるものです。いずれの方法も、カルシウムイオンを卵子内に流入させ、卵子の活性化を人為的に誘起します。
    特に、頭部の円形奇形精子の場合は、通常の顕微授精を用いても、精子頭部の機能異常により、卵子を活性化する能力が乏しいので、これらの人為的な卵子活性化法が奏功したという論文報告はいくつかあります。
    ただ、このような症例の数が非常に少なく、現時点で人為的卵子活性化法の安全性が確立しているとまでは言えません。また、精子頭部の円形奇形精子症が次世代に遺伝する可能性も否定は出来ないと思います。
    ですが、人為的卵子活性化法を用いた場合の健常出産例も報告されていますし、もう出産間近ということでしたら、いまはお腹の赤ちゃんの無事を信じるべきではないでしょうか。良い経過をお祈り申し上げます。