医療法人 越田クリニック

胚培養士掲示板

卵子や精子に関する質問、培養室についてのご質問に当院胚培養士がお答え致します。

ぱこ様から

2013.05.13

  • 他院で治療中ですが、いつも掲示板を拝見しております。
    今回、ご意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
    現在自然周期で採卵、顕微授精して胚盤胞凍結をする方法で治療をしています。3年ほど前に凍結した胚盤胞がありますが、まだ移植はしていません。
    45歳を越しているため、採卵を優先しているのですが、この頃空胞も多く、採卵できても胚盤胞に発達せずに終わる事が多いです。
    そんな中で、胚盤胞にならなかった時に、もう少し早い段階で凍結し、2段階移植に使う事はできないかと思いました。
    せっかく採卵できた卵を廃棄する事はつらいです。
    しかし、発達が止まってからの凍結では2段階移植の捨駒に使うにしても遅いような気がします。
    最初から2分割くらいで凍結する事にするのも、もしかしたら胚盤胞まで育つ卵なら・・・と思ってしまいます。
    この頃あまり2段階移植はされていないような気もしますし、妊娠率は胚盤胞移植と同じ程度だと聞いたこともあります。
    実際のところ、2段階移植はどうなのでしょうか?また培養途中で胚盤胞になりそうか、途中で凍結するかの見極め等はやはり難しいでしょうか?
    次回採卵も、どこまで培養してもらうのか等迷っています。もちろん胚盤胞になるのであれば、それを凍結するのが一番いいようには思います。

  • 胚培養士より

    なかなか結果のでない状況、お気持ちお察しいたします。
     
    現在、胚盤胞移植に挑戦されているということですが、分割が止まってしまう、胚盤胞まで育たないという状態が続くのであれば、2日目や3日目といった初期胚で凍結し、移植することをお勧めします。体外から、体内へ培養環境を変えてみることでうまく育つことが期待できます。
     
    2段階胚移植につきましては、「胚盤胞が育たずに移植中止になることを防ぐ」という消極的な意義と、「子宮内膜の状態を整えて、着床しやすい環境を作る」という積極的な意義があります。
    前者であれば、良好な初期胚を最初に移植し、余剰胚が胚盤胞に育てばもう一度移植する。仮に育たなくても良好胚を先に移植しているので、その胚で妊娠を期待するということになります。
    また、後者であれば、不良な初期胚を最初に移植し、その胚の作用で子宮内膜を着床しやすい環境に整えて胚盤胞を移植し、妊娠を期待することになります。ただしこの方法は現在SEET法という、初期胚の代わりに培養液を注入する方法で代用可能です。
    いずれにしても2段階胚移植では多胎のリスクを伴うため、最近では実施する施設も減少しているかと思います。ただし大きなデメリットがあるわけではないので、凍結している胚盤胞があるということなら、一度2段階胚移植を実施されるのも良いと思われます。
     
    さらに、ご質問にありました、「培養途中で胚盤胞になりそうか、途中で凍結するかの見極め」ですが、胚盤胞に育つかどうかは5日目まで培養してみないとわからず、培養途中で見極めることは困難です。受精卵が複数個得られた状況であれば、初期胚で凍結するものと、胚盤胞まで継続して培養するものに分けてみてもいいかもしれません。
     
    年齢のこともありますので、今後どのような方法で治療されるのか、早急に医師や培養士とよくご相談ください。
    この度はご投稿ありがとうございました。